犬まみれ

三度の飯より犬が好き

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ネタがない

 

ドンドンドンッ!

「おーい、いるんだろぉー?わかってんだよぉー」

 

取り立てが荒々しくドアを叩く中、私は息を潜めて部屋の片隅で両足を抱えて座っていた。

私は愛犬と子供達に囲まれて毎日を過ごす、ただの平凡なアラフォーおばさんだったのに、なぜ…

どうしてこんなことになってしまったのか…

 

 

そう、あれは確か2ヶ月くらい前。

近所に住むママ友とのたわいもない会話から始まった。

 

 

 

「ねぇ、Meさん。最近どう?なんか楽しいことあった?」

「ううん、全然。手のかかる娘たちと犬たちの世話で手一杯で、自分で楽しむ余裕なんてないわよ。あーあ、いつまで続くのかな、この生活。」

 

そうぼやいたらママ友が周りをキョロキョロ見回した後、小さな声で私に耳打ちしてきた。

 

「ここだけの話よ?すごくいい情報があるの。Meさんだけに教えるわ。」

「私もね、つい最近知人に教えてもらうまで知らなかったんだけど "ブログ" っていうのがあって、書きたいこと書き綴るだけでストレス発散にもなるしネット社会の知らない人たちと繋がれるっていう優れものでね。」

「大丈夫!顔もバレないしお金かからないから。」

「夫には言えないけど、私もブログのおかげで世界が変わったわよ?Meさんも一緒にやろう?」

 

ママ友は一気にまくし立てるように話すと、持っていたバッグから手帳を取り出し何やらメモをした。そしてそのページを破って私の手のひらに握らせると、

 

「騙されたと思って、ここにアクセスしてみて」

 

と言い走り去っていった。

私はあっけにとられながらも、手のひらに置かれた紙を広げてみるとそこには

 

"はてな"

 

と謎めいた一言だけが書かれていた。

 

 

 

数日間、私はそれまでと変わりのない日々を過ごして、例の謎めいた言葉も忙しさからすっかり頭の中から消えていた。

 

が、無情にも運命の日は近づいてきていた。

 

ある日、私は夜になってもいつまでもテレビを見続けている子供達にイライラしていた。

成績悪いんだからテレビなんか見ていないで早く勉強しなさいよ、と。

 

そしてそのイライラは中学生の娘の

 

「ねーねーママぁー、

リフジンってどんなご婦人?( ¯⌓¯ )」

 

という一言で頂点に達し、気づけば自室に駆け込んでPCを開き、あの言葉を入力してしまったのだ。

 

「は」…「て」…「な」…

 

その瞬間、画面いっぱいにブログ情報が表示され、私はとにかく今の生活から逃げ出したい一心から登録をして自分のブログを持ってしまっていた。

 

 

 

最初は楽しかった。

書きたいことは沢山あって、書いても書いても物足りないくらいだったし、それまでならイライラしていたことも、

「あっ、これブログのネタにしよう」

と思うと全く気にならなくなった。

日に日に増える読者登録数に悦びをおぼえ、ランキングの上下動に一喜一憂し、今まで経験したことがない刺激に溺れてしまった。

 

 

 

こうして私が1日にPCに向かう時間はドンドン増えていき、家事も疎かになってきた頃、恐れていた運命の日が訪れる。

 

 

THE ネタギレ

 

 

このままではいけない。

どうにかしないと、更新の時間は待ってはくれない。

他のブログにはどんなことが書かれているのか参考にさせてもらおうとネットサーフィンをしてみたが、私には整理整頓術の知識もなければお料理も得意ではないので到底真似することはできそうにないものばかり。

 

"私の今日のコーディネート"

なんて載せようもんなら、およそ3日間くらいで同じ内容の繰り返しになってしまうだろう。

 

……詰んだ……

 

頭を抱えて、ブログの終わりを覚悟した瞬間、ドアの隙間から一枚のメモが差し込まれた。

 

「お取り込み中申し訳ないんだけどー、先生に学校でアイス食べてるとこ見つかっちった。反省文よろしく(๑>؂•̀๑)テヘペロ」

 

この走り書きを見た瞬間私は目が覚めた。

 

そうよ、私には何も無いけどネタの宝庫の娘達がいるじゃない!

いい感じにアホなワンコ達もいる!

彼女達がいれば、私、どんな困難も乗り越えていける!

 

と、この時になってようやく家族の大切さに気付かされた私はこの日を境にしっかりと家族と向き合うようになり、また平凡で穏やかな日常を取り戻すことが出来たのだ。

 

そして現在は、この貴重な経験をたくさんの人の教訓にしてもらうべく、以下のタイトルの講演を全国各地で精力的に行っている。

 

タイトル

『ネタが無い時はネタが無いことをネタにすりゃいいじゃん? 』

 

 

くだらないこと長々と失礼しました